＊悪口雑言＝口汚く、悪口を言うこと。（悪口、雑言、共に悪口の意）
「「！！！シャルの守銭奴！！！」」
金銭感覚が優れているとか、倹約家と言って欲しいな。
「「！！！シャルの鉄面皮！！！」」
おおらかとか、柔軟性があると言ってくれる。
「「！！！シャルの腹黒！！！」」
才覚者とか、英知に富んでいるという表現が的確だけど。
「「！！！シャルの二枚舌！！！」」
奇知が働くとか、舌剣鋭いという方が妥当かな。
「「！！！シャルの色事師！！！」」
博愛主義とか、愛敬が深いだけなんだ。
（あっこうぞうごん）これでもか！とばかりに、途切れることなく悪口雑言が飛び出してくる。
よくこれだけ人間性を否定する言葉を知っているものだと、妙な感心をしてしまう。
形良い唇から溢れ出る歪んだ言葉。
容赦なく放たれる悪口が小気味よい。
それにしてもここまで言われるだけのことをしたかな？と思いつつ、口ごたえもせずにミューの怒りを楽しんでいた。
だが悪口を言い続けるのも体力がいるもので、あるタイミングから急激にトーンが落ちていく。
「言いたいことは全て吐き出した？」
俺の問いかけにふっと口角あげ、満足そうな笑みを溢すミュー。
その顔は完全にストレスを発散した顔だった。
ここのところ仕事が忙しく、会えないだけでなくメールを返すにも遅れてしまう。
俺にとって大切なミューの誕生日だろうと、クロロにはまったく関係ない話しで容赦なく仕事を入れてくれる。
ミューの機嫌が悪くなるのは当然で、その度に平謝りで何らかの埋め合せをしてきたが、今回は連続３回デートの約束を先延ばしにしたせいで、最高潮に機嫌が悪い。
なのに、これだけ悪態を吐いても口にしないことがある。
「それにしてもミューは言いたい放題に俺のことを言っても、容姿だけは絶対に悪く言わないね」
予想外の言葉にミューはきょとんとしたが、次の瞬間にはにっこりと笑う。
そして強請るように腕を伸ばし、俺に抱擁を求めてくる。
要求のままに彼女を抱きしめれば、ミューはやさしく俺の髪に触れ、その手を滑らせるように下ろして頬に指を這わせてくる。
そしてふっくらとした唇から可愛らしい言葉が零れる。
「シャルの柔らかく金糸のようなブロンドも、幼さを残した甘い顔も好き。男のくせに白く肌理細かな肌と私好みの身体も大好き。でも、それ以上に優しいシャルが好き。私の雑言を嫌な顔もせずに聞いてくれるシャルが好き」
甘えるように俺の胸に顔埋め、頭を押し付けてくる。
そんなミューの顎を持ち上げ、散々悪態をついた可愛い唇を塞ぐ。
End
2017/01/27 改稿
2009/03/18 加筆・修正
2007/10/21
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