警告：一部性的表現が有ります。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。
部屋の窓際に立ち、目と同じ高さにあるブラインドの羽を一枚、指先で押し下げる。
弾力のある羽はくの字にたわみ、１０センチほどの隙間を作る。
そこから外を覗けば黒緑をした寒空に、ぽっかりと浮かぶ月。
その形はボクの好きな十三夜。
真円にはならぬ不完全な形に、妙な疼きを覚えてしまう。
何故もこう、月に欲情してしまうのか。
「……何だか月の名前って、エロくて興奮するね」
ブラインドの羽に指を引っ掛けたまま、ボクは上半身を軽く捻り、背後のベッドで横たわるに同意を求めた。
は眠ろうとしたところを邪魔され迷惑そうな顔をするが、強い眠気のために重い瞼を持ち上げるのがやっと。
「……月の名前？」
「そぅ、新月とか、満月とか言うだろ」
ボクは恍惚の表情で答えた。
「…それのどこがエロいの。普通に月の名前でしょ？それよりヒソカも少し休みなよ……ヒソカタフすぎて、迷惑なレベルだよ……」
お褒めの言葉をありがとう。
疲労と睡魔に襲われやっとの思いで返事をするは、だるそうに寝返りを打つ。
ボクの話しが煩いとばかりに、薄い毛布を頭から被ってしまう。
毛布越しに見て取れる、の艶めかしいライン。
ゾクリとしながら見惚れていると、は１０秒後には軽い寝息を立てていた。
タフなのはキミも同じこと……
でもさすがに今夜は疲れたのだろう。
疲れさせたボクは、まだ精力を余らしているけれど。
組織に属し上得意を専門に、彼らを慰め満足させるのがキミの仕事。
業務を終え深夜に帰宅すれば、予告なくボクが部屋で待っていた。
大喜びで跳びつくを、そのまま抱きかかえて寝室へと連れ込んだ。
前戯がなくとも仕事直後のキミは、ぬるりとボクの猛りを簡単に呑み込んでしまう。
そのくせ締まりが良くて、何とも言えぬ感触に、ボクの身体は下になったまま打ち震える。
逆に上になったの身体は大きく仰け反り、白い喉を震わせて喘ぐ姿が絶品。
そんな姿を楽しみながら、過敏になっている身体を下から遠慮なく突き上げた。
元々にとってボクも顧客の一人だったのだが、気が付けばから鍵を預かる個人的な関係になっていた。
携帯のアドレスに書き込まれては消去されていく女達の名前とは違い、消されることのない名前。
そんなキミだから、抱きついた身体から石鹸の匂いがした日には……
の仕事がなんであるかを理解していても、嫉妬心がムクムクと顔を出す。
ほんの一時前までボク以外の男としていた痕跡を消し去ろうと、ボクはムキになってを攻めてしまう。
疲れた身体には酷な扱い。
でも違うだろ？仕事とプライベートでは。
最後は歓喜の声も涸れ、ただ揺らされる身体となっていたが、ボクはそれでも足りないとばかりに揺らし続けていた。
ボクって鬼畜？でも、そうさせる魅力的なキミが悪いのだ♪
……再び視線を寒月に戻す。
普通、月の名前と言われて頭に浮かぶのは、新月、三日月、半月、満月の四つくらい。
でも月にはもっと名前がある。
月に関した表現に、月を表す言葉。
たとえば淡月、孤月、白月、佳月。
どれもこれもボクには淫靡に聞こえる。
実際のところ月を読んだ詩は古今東西山ほどあり、その大半は人生と恋愛に関するものばかり。
恋愛に関する以上、そこには生と性がある。
生まれて来る時は満潮時で、亡くなる時は干潮時に向かっていることなどは、世間一般に知られているところ。
それに女性の生理も月経と言うではないか。
殺人も満月の晩に多いと言う。
そう言われてみれば、ボクには思い当たる節が多過ぎる。
人間の生活は古代から、月の影響を少なからず受けている。
月の公転によって起きる月相。
地球を軸にして、太陽の明かりによって出来る影が月の満ち欠けを作り、しいては引力にも影響する。
太陽と違って月は自ら光を放たないが、反射した青白い明かりが何とも卑猥だ。
だからボクは月を愛でるのだ。
月齢１ 新月 / 朔
月齢２ 二日月
月齢３ 三日月
月齢７．５ 半月 / 上弦の月
月齢１０ 十日夜
月齢１３ 十三夜
月齢１４ 待宵月
月齢１５ 満月 / 望月 / 望 / 十五夜
月齢１６ 十六夜
月齢１７ 立待月
月齢１８ 居待月
月齢１９ 寝待月 / 臥待月
月齢２０ 更待月 / 二十日月
月齢２２．５ 半月 / 下弦の月
月齢２３ 二十三夜
月齢２６ 二十六夜
月齢２９ 晦
月齢の半分以上に名前がある。
名前の見当たらないものはこのさい無視をして……
何と上手い名前を付けたものか。
どれもこれも、青白く浮かぶ月にふさわしい名前。
形だけなら十三夜が好きだが、名前なら月齢１７日の立待月が好きだ。
共に満月を挟み、二日を前後する。
十三夜とは逆に、右側から欠ける十七夜。
野辺に立ち、待っている間に出て来る立待月。
ボクに言わせれば野辺に勃ち、レリアと立ったまま深く繋がり、欠け始めた不完全な月を愛でるのだ。
向き合ったレリアの尻を掴み、しがみつく身体を垂直に突き上げる。
つま先で立ち、逃げ場を失った肉体は、内側を擦られる度に締め付け、いやらしい水音をたてる。
激しい上下運動に、滑る液体が猛りを伝わり滴り落ちる。
……喘ぐキミの肩越しに、月は高く上がって行く。
何とも風流じゃないか……
こんな月見を二人でしたいのだと言ったら、キミは怒るかい？
クックックッ、怒るだろうね。
向きあったままではキミに月見は出来ぬ。
やはり一緒に観月をするならば、キミの身体を四つん這いに、碁盤攻めにでもした方が良さそうだ。
それとも座位で絞り芙蓉で観月をした方が風情があるか。
どうだい？これなら二人で秀麗な月を味わえる。
疲労困憊たが、満足しきって眠るボクの可愛い人に毛布をかけ直してやる。
ボクの月がそこにある。
背後から攻めれば、まるで三日月のように反る背中。
上になり、片足を高く持ち上げ斜めから突けば、半月のような胸が揺れる。
どれもこれも、満月と思える完璧な姿で、至福の世界へと誘ってくれる。
だからキミの存在は、ボクのもっとも愛す月そのものなのだ♪
End
2018/09/25 改稿
2012/01/26
Back寒月が冬の季語であることは知っていたが、晩冬か。