名前を知っている程度の関係だったが、って、こんなに可愛かったっけ！？
確かによく見れば俺好みのヨルビアン系で、金髪の可愛らしい子。
しかも服で隠そうとしているが、これまた俺好みの巨乳。
こんな魅力的な女の子が身近にいたなんて、気が付かなかった俺は大バカだ。
は俺が週一で通うカフェでバイトしている。
親が人気カフェのオーナーということもあり、学業に影響が出ない程度に、小遣い稼ぎのバイトをしている高校生。
口説きに口説き、やっとの思いで付き合ってもらえることになれば、から出された条件は厳しいものだった。
何しろメールのやり取りは一日最大５回まで。
平日のデートは週に１回。
学校が終わった後の２時間に限定。
週末は土曜か日曜日のどちらかで、午前１２時から午後３時までの３時間。
俺としては毎日でも会いたいところだが、エスカレーター式とは言え、の通う高校は有名な進学校。
成績順に大学の学部が優先的に選べる。
だから３年生のとしては、狙う学部のためにも勉強は怠れない。
そんなの希望を無視するわけにもいかず、俺は渋々条件を飲んだ。
ならばとの貴重な時間は何をしても許されるのかと言えば、許されるのは手を繋ぐことだけ。
必要以上に触れることはご法度だ！
それじゃあセックスはだめなのかと訊ねてみれば、言葉にしない代わりにもの凄い目付きで睨まれた。
当然か……とはまだキスすらしていない。
そのうえ自分以外の女の子を見てはいけないとか、口を聞いてはいけないとか。
もちろん触れてもいけないと、当然のように言われた。
これは好意が思いのほかあり、俺に対する独占欲があるためだと解釈した。
何だかんだの初デート。
ばったりの同級生グループに出会ってしまい、後日あのカッコいい男性は誰かと、俺のことを問われたらしい。
中でも学年一の美人に羨ましがられたと、俺に嬉し気に報告をした。
優位で始まった交際も、にとってはまんざらでもないようだ。
が俺に好意を持ってくれているのが分かっていても、やはり恋の天秤は俺の方が重い。
今までの俺なら口説き落とせば速攻で、ラブホにしけこんだのに……それがどうだ。
これでは小学生なみの交際じゃないか！
否！いまどき小学生だって、やる奴はやっている。
いい大人の俺が、プラトニックラブなんて……
蛇の生殺しか！
可愛いを目の前に、触れる事を許されないなんて拷問だ。
って、手は繋げるか……
でもなまじ手を繋げるから始末が悪い。
体温を直に伝わってくることで、の舌ったらずな口調が喘ぎ声に聞こえ、俺のいかがわしい妄想が広がってゆく。
これは神が与えた精神修行の一環か！？
目の前に最高の御馳走を置かれ、食べられぬ不満がとてつもなく大きくなる。
最初は服で隠していた胸が、いつの間にか俺を挑発するかのように、深い谷間が見えるコーディネートに変化した。
これでは目に毒どころか、爆死しそうだ。
これが１０代の時だったら抑えることはせず、の脚を無理やり開き、既成事実を先に作っていたかもしれない。
でも今の俺は２０代……
それにここは流星街でもないし、抑えるべきはのためにも自制しなければいけない。
……身を捩りたくなる欲求不満。
おかげで最近は、自家発電の回数が鰻上がり。
もちろんを想っての行為だ。
ともかく付き合いさえ出来れば、の条件なんか徐々に崩して行けばいい。
いざとなれば、俺には『携帯する他人の運命』 もあるからさ！
ついにシャルから告白をされ、私は彼との交際をOKした ♪
ようやく辿り着いた道のりは長く、これはシャルとのスタート地点に他ならない。
従って、一度捕まえた獲物は逃さぬよう、最大限の努力をするのだ。
私はこの１年、大好きなシャルを手に入れるため、徹底的に彼をリサーチした。
シャルと知り合ったのは偶然だった。
パパの経営するカフェに、シャルが客としてやって来たのがきっかけ。
たまたま店に遊びに行った私はシャルに一目ぼれ。
私好みの甘いマスク。
それを強調するかのような、大きな緑色の目。
ふわりとした金髪。
そのうえ長身。
どこをとっても私好みだが、一番の魅力はシャルスマイル。
でも彼は、既に店で働くブロンドの女の子と付き合っていた。
店での２人はそれとなく客と従業員のふりをしているが、何となく彼女の態度で２人の関係が分かってしまう。
どうやら好きな人が出来た時、女の勘は鋭く働くものらしい。
その晩、私は大好きになってしまったシャルに、彼女がいることに悲しさを覚え、一晩中泣いた。
でも立ち直りは早い。
彼に好きな人がいるならば、私に興味を向けさせればいいだけのこと。
幸い私には、美形の両親から生まれた強みがある。
それに頭も悪い方じゃない。
学校の先生にも探求心旺盛、分析には長けていると評価を得ている。
彼のフルネームはシャルナーク＝リュウセイ。
歳は２２歳で、１年ほど前からこの街に住んでいる。
住まいは店から５分ほどのマンション。（私の住んでいる所からは１０分ほど）
仕事はフリーのIT技術の開発者。
仕事の関係で、月に１０日は出張をしている。
ここまでは店の従業員から得た情報。
彼について調べれば調べるほど、女癖が悪いことを知ってしまう。
店の女の子と付き合っているくせに、他にも付き合っている女の子が複数いるではないか。
そのうちの１人は私の通う高校の先輩だった。
それ以外にも年上の女性、もしかして人妻かもしれない美しい人と、楽しそうにドライブしているところを目にしてしまったこともある。
シャルナーク＝リュウセイ、とんでもない女たらしだ。
その代わり、手も早いが別れるのも早い。
この上なく危険な香りのする男性なのに……
そう分かっていても、一度脳を支配してしまった恋のアドレナリンが落ち着くことはなく、むしろシャルをどう攻略するか、私の脳細胞は活発に思考する。
くやしいけど、彼と別れた女の子達に近づき、仲良くなって彼の情報を子細に仕入れた。
そして私はそれとなくシャルを観察し、同時にシャルと付き合っている女の子達を研究した。
蓄積されていくデーターを、私は私なりの解析をしてゆく。
まずはシャルを攻略するための外見は、可愛らしくコケティッシュ。
髪はブロンド、目はブルーのヨルビアン系であること。
背は特にこれと言った決まりはないが、ボン・キュッ・ボンのグラマラス体型が望ましい。
つまり私は限りなく、シャルのターゲットになりえる♪
彼の好みのメークもはっきりしていた。
フェミニン系の派手すぎないメーク。
ルージュの好みはオレンジ系かベージュピンク。
髪型は、たまにアップすると好感度が一気に上がるようだ。
好きな服装はミニスカート全般。
足を隠すパンツ類は御法度だ。
そして靴はヒールの高いものが好み。
これだけ分かれば、シャルを落とせる可能性が見えて来る。
シャルに付き合っている女の子がいた時も、次期に別れてしまうからと自分に言い聞かせ、必死に耐えたのだ。
いつか必ずシャルが私に振り向くと信じて！
そして彼の目が私に向けられるよう、彼好みの女性になるため努力した一年。
渋るパパを説得し、シャルがやって来る特定の曜日だけ、店でのバイトを始める。
幸いにして、シャルと付き合っていた従業員の女の子は、シャルと別れると同時に店を辞めてしまった。
チャンス到来！
店にやって来るシャルの目が、それとなく私を見ている。
これがシャルの常套手段。
自分の気に入った子に、自分を無意識に意識させる方法。
誰だってカッコいい男性に見られ、気分の悪い人間がいるはずがない。
シャルは自分の利点を最大限生かし、相手の意識を自分に向けさせる。
少しでも向けさせてしまえば、９割方はシャルに落ちたも同然。
でもこれではシャルの術中に嵌ったことになってしまうので、話しのきっかけを作ろうとするシャルを、私は大切なお客様の一人として扱った。
そう……オーナーの娘として、大切なお客様の一人として扱ったのだ。
これがシャルのドツボに嵌る。
思い通りにならぬ私に、彼の興味が最大限に刺激されてしまう。
私がバイトする日以外にも、店に通いだしたシャル。
店で働く従業員から、それとなく私の情報を聞き出しているようだ。
シャルの目的が分かっているので私は有頂天。
でも、まだまだ焦らさなければ！
いつしかシャルは付き合っていた女の子達と全て別れ、ひたすら私を口説いていた。
すぐにでもOKしそうな心を抑え、ひたすら断わり続けることでシャルの関心を煽る。
３ヵ月もたったころ、シャルの熱が最高潮に上がったところで交際をOKする。
でもここからが勝負のしどころ！
この恋愛、私が優位に立つために！
シャルの関心を失わないよう、彼の手綱を取らねばならない！
更に焦らすだけ焦らし、餌は小出しにするのだ。
……私って、何て嫌な女なんだろう。
本当は、素直にシャルの胸に飛び込んで行きたいのに……
夢にまで見るシャルとのキス。
いいえ、キスだけじゃない……夢の中の私は、既にシャルと初めての経験を済ませていた。
……本当のところ、焦らされているのは誰？
夢が現実になった瞬間、彼の興味は他に移るだろう。
何しろ私のリサーチでは、彼が楽しんでいるのは恋愛ごっこ。
完全に手に入れてしまえば、恋愛ゲームは終幕を迎えてしまう。
シャルを１秒でも多く所有するために、リサーチの中から見つけた法則に則る。
そしていつしか本当に彼を独占出来るよう、私はもっと魅力的な女性になるのだ。
今は恋愛しながらも、そのための準備期間に他ならない。
End
2019/06/13 改稿
2009/05/03 加筆・修正
2008/08/14
Backこの二人、現時点ではどちらが優位なのか分からない。でも、シャルの方がかけひき上手……さらには、結末が見え過ぎている。うちのシャルナークは、移り気なのだよ。