Heytun 5
警告：タイトルどおり痛い話しです。でも愛はあります。この手の話しに不快を感じられる方はお避け下さい。
フェイタンは流星街に戻って来ると、いの一番に私の許へとやってくる。
彼らの拠点であるホームなんて後回し。
下手をすればホームには顔を出さず、私の住いに籠り目的を遂げ満足すると、外の世界へと戻ってしまうこともざらだ。
彼に望郷の念なんてものは始めからありゃしない。
本来なら帰りたくもない流星街にやって来るのは、私に対する想いだけ。
フェイタンと私。
私達は子供のころ、クロロ＝ルシルフルがリーダーであるグループに所属していた。
出会ったころの私達はまだ幼く、肩を寄せ合って生活しなければ、この流星街では生きていけない存在だった。
後になって知ったことは、クロロがかなり寛大な人間で、そこに集まる子供達もクロロ同様に懐の深い人間が多かったことが幸し、何の取り柄もない私に生きる場所を与えてくれていたのだということ。
流星街の中で最も生きることが過酷だと言われているこの地区では、無能でひ弱な子供はあっと言う間に淘汰されてしまう。
才能がなくても商品価値のある美しい子供なら、多少弱くても外の世界に玩具として売られ、そこそこの外観であれば流星街の性需要を満たすため、商品として生き残れることが出来た。
ただし売買されてしまえば御主人様に隷属するという、重い足枷が付いてくる。
他の子供達のグループから見れば、能力も外見も平均値から落ちる私は、かなり良い待遇をクロロのグループで受けていたらしい。
もっともこの最悪地区での良い待遇だから、たかが知れているけれど。
それでフェイタンはと言えば、瀕死のところをクロロがゴミ山で拾って来たのだが、最初はホームの窓から遠目に見た二人の姿は、クロロがゴミ袋を背負っているのかと思ったほど。
あの時はクロロもまだ背が低く、腰を折った背中の上の塊が重く大きく見えた。
飢えた私はクロロがゴミ山で何か美味しいものでも見付けたのではないかと、嬉しさのあまりホームを飛び出しクロロに駆け寄る。
しかしクロロが背にしていたものは子供で、大きな失望感に溜息を付く。
背中の子供はケガで顔が腫れあがり、目は虚ろ。
しかも頭の上では数羽のカラスが早く餌になれと、ぐるぐると飛び回る。
あぁ……クロロがまた、ゴミ山から子供を拾って来た。
何に興味を引かれ、こんな死にかけた子供を……
私が呆然としていると、そんな私を見てクロロは苦笑いをする。
ホームにたどり着くなりクロロは自分の寝床にフェイタンを下ろす。
寝床と言っても板張りの床に毛布が引いてあるだけの場所。
あのころのホームは個人の部屋なんてものはなく、ボロ布で男女の部屋を仕切ってあるだけの作りだった。
すぐさま仲間達がボロ布に包まれたフェイタンを裸にすれば、やせ細った身体のいたる所に殴られた痕や、モクを押し付けた痕があり、執拗な傷痕に私は目を見開いてしまう。
普通の子供なら死んでいただろう。
だが頑強な彼は、三週間後には上半身を起こし、一ヶ月後には自力で歩くまでに回復をする。
その間、クロロの指示で介護をしたのは私だ。
子供の私に看護なんて能力はないので、ただフェイタンの様子を枕元で見守るだけ。
出来ることは食事の世話と下の世話。
後は毎日傷口のガーゼを交換し、体を出来るだけ清潔に保ってやること。
ある日私はガーゼを剥がしていると、奇妙な快感を覚えた。
傷口に出来た新しい肉と皮膚が貼り付いたガーゼをゆっくりと剥がす。
フェイタンの痛みを考え慎重に剥がすのだが、彼の痛みを堪える表情と、痛みに反応する体に疼きを覚えてしまう。
今でこそ、それが疼きであると認識出来るが、当時は奇妙な快感としか言いようがなかった。
我慢強く泣きを入れぬフェイタンを泣かしてみたいと、子供心に加虐心を煽られてしまう。
何とも残酷な話しだが、どこまで耐えられるのか試してみたかった。
それを知ってか知らずか、介護に身を任せた特別なシチュエーションに、フェイタンが徐々に反応を示して行く。
怪我人のフェイタンを庇いつつ、それでいて私はちょっとだけS的な行動に出た。
今にして思えばガーゼを少し乱暴に剥がすという、たわいのない意地悪。
すると彼は痛みだけではない、M的な反応を示す。
イタギモイと言う何とも言えない表情に、私は恍惚としてしまう。
子供だった私は、それがSMの類だと理解してはいなかったが、本能的にフェイタンと私は快感の共有者であることを悟った。
急激に体力を回復させていくフェイタンに嬉しさを感じながらも、私の役目がもうすぐ終わるのだと思うと悲しくてしょうがなかったが、彼は私の悦びを奪いはしなかった。
また彼も自分の悦びを手放そうとはしなかった。
成長するにつれ、二人の行為は徐々にエスカレートして行く。
荒事の多いフェイタン。
特に大人達との揉め事では率先して戦う。
生まれついての戦闘センスはクロロも舌を巻くほど。
だが当然怪我は付き物で、その度に私は彼の面倒を看た。
そして二人が当然のように結ばれた時、私達は出会うために生まれたのだと運命を知った。
もちろん二人の仲は公認だが、やっていることはクロロ達には秘密だ。
何しろ攻撃的なフェイタンが、実はＭでしたなんて、口の悪い連中の恰好の餌食になってしまうから。
だから私とフェイタンはホームで二人だけの時を狙い、互いの欲望を満たす行為に没頭した。
あの攻撃的なフェイタンが、私の前では受順な下僕となり、無能な私がフェイタンを目の前にすると女王様になる。
こんな姿を誰が想像出来るだろう。
ある時、万を期したかのようにクロロが重大発表をする。
盗賊となって流星街を飛び出し、世界中の宝を奪い、何の制約も受けずに生きる。
そのために皆で念能力を習得しようというもの。
私は初めて聞く念能力に戸惑った。
クロロはかなり以前から念能力について研究していたらしく、天賦の才と努力で、いつの間にか能力を身に付けていたが、要領の悪い私はいくら教わってもマスターすることが出来ない。
そんな中、フェイタンは必死に念能力を習得し、クロロを頭とする幻影旅団の一員となるが、私はかすりもしない能力に見切りを付けた。
その代わり細かい仕事が好きだった私は、何とか宝石を加工する技術を身に付け、今では幻影旅団が盗んで来た宝石を再加工する仕事を流星街でしている。
かっての仲間達は流星街を出て、外の世界に仕事場を設けることを勧めてくれるが、私は結構ここ流星街が気に入っている。
フェイタンも外の世界で一緒に住もうと以前は誘ってくれたが、今では私の気持ちを尊重し、こちらへ定期的に通ってくれる。
この危険極まりない地区で、幻影旅団フェイタンの女というブランドが、物騒な地区に住む私の安全を保証してくれている。
子供のころ、なぜフェイタンが大怪我をしていたのか誰も聞かないし、彼自身も語らない。
怪我の痕を見ればそれが折檻やリンチの類であることは明白で、理由を訊かずとも状況は理解出来るし、彼にとって流星街がトラウマになっていることは、ここへ帰りたがらないことからも推測が出来る。
ただ彼が念を身につけた時、、自分を痛めつけた連中を清算するため、『許されざる者』を発動したことは、遠くの空が紅蓮の炎に包まれたことで、一つの区切りをつけたことを知った。
彼の人生の中で、今が一番輝いている時だと言ってもいい。
旅団の中で戦闘と拷問を担当し、団長であるクロロからの信頼も厚い。
そして一戸建てを構えた私とは、気兼ねなく愛し合えるようになった。
もっともホームに住んでいた時、仲間達の目を盗み、フェイタンと行うセックスはスリルがあり、あれはあれで大いに興奮したもの。
彼の能力に気が付いた私。
そして私の能力に気が付いた私。
表と裏は表裏一体。
拷問が得意だからとＳである必要もなく、ＭであることがＳに磨きをかけることもあるのだ。
事実、フェイタンに痛みを与えることを許されるのは私だけ。
でも外の世界でフェイタンは、Ｓとして女性を抱いている。
最愛の彼が自分以外の女を抱いて、腹が立たないかって？
立つもんですか。
だってフェイタンは、私にされた事を女達に試しているだけ。
彼はちょくちょく軟弱な実験体を壊してしまい、その度に私の才能を惚れ直すのだと言っていた。
彼の能力は、私の支えがあって開花するのだ。
仲間証言１
「リノとフェイタン？羨ましいくらい仲がいいよね。やはり二人の性的嗜好が合うからじゃないの。でも、まさかフェイタンがＭで、リノがＳだとは思わなかったけど」
仲間証言２
「あいつら昔からアレを始めると、全く周りが目に入らねぇみたいだな。用心深いフェイタンが隙だらけだぜ。こっちが気を使い、わざとホームを空けてやっているっていうのに。それだけリノに嵌っているってことだろ」
仲間証言３
「最初は驚いたわよ。あの大人しいリノが口汚くフェイタンを罵って、手製のムチでお尻を叩いているのよ。二人がそれで好ければいいのだけどね。ある意味、羨ましい関係ね」
仲間証言４
「リノとフェイタンか？俺は最初から、なんとなく二人の相性の良さに気が付いていた。だからリノにフェイタンの介護をするように頼んだのは間違いじゃなかった。あいつの能力に磨きをかけたのは、リノの功績だろ。二人の資質と素養が、がっちり一致したってことだな」
END
2017/07/11 改稿
2013/10/31
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Q:仲間証言は誰でしょう？