警告：一部性的表現が有ります。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。
「それは見方によるんじゃないかな？」
理屈っぽいエレナを黙らせるため、ボクはやんわりと言った。
これ以上不毛な会話をしても意味はないが、時間潰しにはなかなか面白い。
ソファーに深く腰掛け大きく脚を開き、ボクの上にエレナを座らせていた。
ボクを背もたれ代わりに寄りかかる彼女を後ろから軽く抱きしめ、耳元で囁いた。
「キミの身長は１メートル５８センチ。世界のどこに行っても変わることはない。それは世界共通のスケールがあるからだ。そして今、ボクが手にするこの胸は、７５Dカップ。これも世界共通のサイズ。あえて言うならIUAの決めた国際共通規格」
そう言いながらエレナの双丘をぐっと摑み、長い指を巧みに使い揉みしだく。
彼女の口から小さな悲鳴が漏れたが、それはすぐに甘い吐息へと変わる。
その感度の良さに笑いを押し殺し、
「クックックッ……だけど、この胸の形が良いか？感度はいいか？それらを決める基準はボクのスケールさ」
広げたボクの手の平の中で少しはみ出た乳房が、ボクにとって形の良い胸……つまりボク好みというわけだ。
しかも乳首は薄いピンク色で、抜群の感度をしていればボク基準では最高級品。
同じサイズでも、人によって形は様々。
そこに乳首の形や色も加えれば、千差万別と言える。
「別の言い方をすれば、キミは仕事として事務的に人を殺すだろ。だけどボクは依頼された仕事だとしても、趣味の一環として人を殺す。もっともそれが青い果実なら、趣味ではなく道楽になってしまうけどね」
今度は腕の中のエレナの耳を甘く噛む。
思わず項をそらし、小さく『いやっ、ヒソカ』と、ボクを喜ばすように身体を仰け反らせる。
「つまり尺度の違いとは、客観ではなく主観から成り立つものなのさ。それも自分の経験値だけが尺度の基準になるんだ。同じものを見て手にとっても、人それぞれに感じ方は違うからね」
「……」
「それで、キミの質問だけど……」
ボクはエレナの背中に顔を埋め、熱く息を吹きかけながら言った。
「誰がキミを愛していないって？……それはキミの勝手な言い分だろ」
「……」
「いつボクが浮気したって？それは全てキミの思いこみだね」
「……」
「もしもボクが浮気をしていると言うのなら、それはキミの基準で言っているに過ぎない。なぜならボクは、キミをこんなにも愛している。だから他の女と寝ることは、単なる性欲処理であって、愛情表現ではないと言うこと。つまり浮ついた気持ちでしているわけではなく、いたって生理的なもの。それを理解して貰えないなんて、悲しいね……」
ボクはボク基準で説明を展開させる。
きっとキミは納得出来ずにいるはず。
ボクはキミとのデートより、青い果実との戦いを優先させる。
何しろキミとのデートとは違い、戦いは２度あるとは限らない。
チャンスは大切にしなきゃ。
それに必要ならば都合の良いウソも吐く。
出先きで溜まれば現地調達で処理もする。
ボクはボクにとって、最も優先されるべきことを優先しているだけに過ぎない。
だから恋愛を優先するキミとは同じ尺度では語れない。
尺度の違い……
ボクはキミがボクを愛する程にはキミを愛せない。
キミが望むように、同じ目線での恋愛は無理だと言うこと。
だが自分の中で順位を付けるなら、一番愛しているのはキミに他ならない。
もしもボクなりの愛し方が嫌だというのなら、このまま別れてもいいのだと囁こう……
ボクの言わない言葉を察したのか、キミの心音が跳ね上がる。
「嫌っ……ヒソカとは別れたくないの」
「そうなんだ。ならばキミは、これからどうしたらいいと思う？」
「……」
やはりキミはお利口さん。
こう言う場合、自分に不利にならぬよう、口を噤むことが最善の策。
違う尺度を黙ることですり合わせる。
そう…納得出来ないのに別れたくない一心で、ボクの尺度にすり合わせるのだ。
だから無理がたたり、時折りボクの尺度に不満を言うことになる。
それもボクを試すかのように、ボクに抱かれている最中に……
よく見てごらん……鏡の中のキミとボク。
繋がった一点が、会話の間緩むことはなかった。
打ち込まれた杭はしっかりとキミに反応をしていた。
キミの背中が満足気に笑う。
下腹部から伝わる押し殺した笑い……
そしてキミは再びボクの上で揺れ続ける。
END
2018/06/11 改稿
2009/03/12 加筆・修正
2007/04/21
Back以前UPした『趣味と道楽』の、延長線上の作品です。下書きではクロロだったが、清書の段階でヒソカにした方が面白そうなことに気付き、急遽ヒソカ向きに全体を書き直した次第。