Hyskoa 41
警告：一部性的表現が有ります。また性差別的発言も有ります。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。
ボクとしては褒めたつもりだったのだけどね……
それともキミにはこの上なく皮肉に聞こえたのかい？
もしもそうだとしたら、それはとんでもない誤解だと言っておこう
ボクの一言に、マリエが鏡の前で奇妙な顔をしている。
否、奇妙な顔を作っていると言うべきか……
マリエは真一文字に結ばれた口の両端を必死に吊り上げようとするが、引き攣った唇は上手く上がってはくれない。
それでも無理に上げようとするものだから、頬がびくびくと痙攣を起こす。
さすがに頬が痙攣したのには驚いたのか、目を丸く見開き呼吸を止める。
次の瞬間大きく息を吸ったのが良かったのか、頬は緩み痙攣は治まる。
せっかく元に戻ったのだから止めておけばよいものを、今度は広げた掌を頬に押し付け、口角を持ち上げ始める。
いくらそんなことをしても無駄であると、キミが一番よく知っているはずなのに。
制約と誓約
自身が作り出した皮肉なルール。
国色天香、天姿国色と言うか、マリエの美しさに異を唱える者はいないだろう。
だかその美しさに誘われまとわりつくハエは少ない。
何故なら美しさ以上に際立つのは、無表情に見える冷ややかな顔。
まるで能面のように見える顔は、男女年齢を問わず拒絶しているかのようだ。
一般的な女達のように媚びたり、下心が見え隠れする笑みとは無縁。
全ての人間を撥ねつける相好。
そんな女に近づこうとする輩は、奇特としか言いようがない。
もしくは変わり者か。
くっくっくっ……つまりボクは奇特なハエであり、変わり者だったと言うことだ。
ボクに言わせればマリエほど面白い女はいない。
そしてマリエほど表情豊かな女もいない。
実のことを言えば冷ややかなのではなく、笑うという表情を失ってしまっただけのこと。
おかげで形の良い口は必要な時以外はくっと結ばれ、長いまつ毛で縁取られたアーモンド形の大きな目は冷たく見開く。
そういえばこんな顔をした奴が、ゾルディック家にも一人いたっけ。
人間口角を上げないと声は一本調子となり、感情を失ったかのように聞こえる。
だがそれは人に与える印象で、マリエの中は感情の坩堝だ。
マリエは子供のころ一族を父親の政敵に皆殺しにされ、復讐という目的のためにより強い念能力を欲した。
そのために起てた制約と誓約。
これと似たような話しを、これまたどこかで聞いたことがある。
でも少し違うのは、マリエは大切な感情表現である笑みを制約とし、爆発的なエネルギーを生む強化系の能力を誓約で得た。
マリエの華奢な身体を見て、誰が彼女を強化系だと思うだろうか。
それは相手に隙を作らせることであり、マリエにとって有利な戦いに導いてくれる。
幻影旅団きっての力自慢ウボォーギンを以ても、制約と誓約の元にあるマリエに勝てる見込みは限りなく低い。
不意に復習者に襲われた連中は、マリエの思惑どおり、無表情で行われる作業で肉片と化す。
そうやってマリエは一族の仇を一人ずつ討っている。
そんなマリエに出会ったのはハンター試験でのこと。
ボクは試験会場に将来の玩具になる素材はいないか、チェックしていた時のことだった。
粗野な連中が大勢集まる中でマリエの存在は浮いていた。
美しいが無表情のマリエに粉をかける奴はいない。
少し離れた所から、マリエの様子を窺うのみ。
頭の中では卑猥な妄想をし、マリエをご飯に自慰をしそうな連中。
そんな中でマリエに声をかけたのはボク一人。
二言三言の会話の中で、ボクの本能がマリエにズキュンとなった。
試験本番、ボクは試験官を半殺しにしてしまったことで失格。
早々とハンター試験を離脱。
蓋を開ければこの年は、試験に合格したのはマリエただ一人。
念願通りブラックリストハンターとなり、ハンターカードを手にしてハンター協会の本部を後にするマリエを、ボクは路上で拍手をもって迎えた。
そしてその日から、ボクとマリエの関係は始まる。
マリエはほんの少し前までボクの腰に長い脚を絡め、ベッドの上で揺られていた。
そして昇りつめようとした時、いつも通りに四つん這いになろうとした。
ボクだって、後ろから攻めるのは大好きさ。
でも……
細い腰の両サイドに手をあてがい、ロングストロークで最奥を突き、キミの膣が激しく収縮するのを感じながら解き放つ精。
マリエは背骨が折れるのではないかと思うほど背を仰け反らせ、声にならぬ歓喜をあげる。
そして昇りつめた頂きを１秒でも多く貪り、最後はへなへなと力を失い崩れてゆくマリエの上に、まだ硬さを残したボクをキミの中に残し、汗ばんだ背にボクは覆いかぶさる。
まだ息の整わぬマリエの耳元で、『良かったよ、マリエ♪キミは最高だ❤』と褒めたたえれば、枕に深く顔を埋めたマリエの耳は赤くなる。
そんなマリエの首筋から背にかけ、ボクのモノである印を遠慮なく落とす。
マリエは喜怒哀楽という顔での表現を失った代わりに、声と身体で表情を表すようになった。
それがボクにとってどれだけ素晴らしいものか、キミに解るだろうか。
女の中には房中で演技をする奴も多く、お前は商売女かと言ってやりたくなるほどだ。
でも男とは哀れな生き物で、たとえウソだと分かっていても腰を振ってしまう。
だがキミは表情を作れない顔で、全身全霊で表現する。
これ以上のモノはないと言いたげに。
感極まった声を喉から絞り出し、ボクの全てを掴み放そうとはしない。
無表情な顔が悦びに震えていた。
その顔を、ボクはもっと見ていたい。
だから四つん這いにはならず、今日こそ最後までキミの顔を見て、２人で共に果てたいのだ。
だから……
必死に両手で顔を隠そうとするマリエの手を剥し、マリエの顔にキスの雨を降らす。
さぁ、もっと見せてごらん…キミの悦びの顔を。
ボクの刻むリズムに合わせ、マリエの顔が美しく歪む。
どんな女のよがり声よりも、キミの喉から絞り出される淫声が、はるかにボクを昂らせる。
あぁぁ、マリエ♪やはりキミは最高だ❤
額の汗は頬骨を伝わり、更に大きな滴となって顎から滴り、まだ呼吸の整わぬマリエの上下する胸元へと落ちる。
大きく上下していた胸はすぐに落ち着くものの、マリエは放心状態。
朦朧とした顔でボクを見上げるマリエに、ボクは熱を残した声で言った。
「マリエ。キミの笑い顔は極上だ♪それに逝く時の表情は格別ときている」
余韻を残し虚ろだったマリエの目が見開かれ、上になるボクを凄い力で押しのけ、素っ裸のまま壁に掛けられた鏡に一直線。
そして自分の顔を確認するや否や、鏡に向かって変顔を始める。
その意図が解ったボクは吹き出した。
するとマリエは眉間に深い皺を寄せ、ベッドで笑うボクを睨みつける。
嫌々、キミを揶揄ったわけじゃない。
ボクには魅力的に笑うマリエの顔が見えるのさ。
そして誰よりも、感情を表すキミを知っている。
だけどそんなこと、ボクだけが知っていればいい。
そうだろ、ボクの可愛い人……
痙攣の治まった頬を掌で持ち上げ、必死に笑みを作ろうとするマリエ。
……やはりキミは可愛らしい。
ボクはそっとマリエに近づき、背後から抱きしめる。
ほらね…言葉より、ボクのここは正直だ。
マリエの腰陽関に押し付けられたボクの下半身。
鏡の中のマリエは首を竦めたくせに、小さく吐息を漏らす。
キミが無表情に笑うから……
だからボクはキミを手放せない
END
2018/08/11 改稿
2014/11/26
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UPした当時は性描写が文章の1/3を占め、地下格納庫作品となりましたが、改稿時に割愛をして、表に出すことにしました。ヒソカ、無表情の彼女にべた惚れ。