警告：一部性的表現が有ります。百合的要素も含まれています。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。
若干、『ささやかな抵抗 （マチ）』地下格納庫作品に絡んでいます。
「クロロって、花に例えるならば月下美人」
女ならいざ知らず、男を花に例える感覚が理解できない。
「シャルナークは黄色くふわりとした花を咲かせる月見草。ノブナガは小さな白い花を点々と付ける夜行花。フィンクスは凛と背筋を伸ばすように咲く夕萓」
ここで一息吐き、目の前の俺の顔を覗き込みながら、
「それに、白いレースのような妖艶な烏瓜の花は///」
ルナの言葉を遮り口にした。
「それはヒソカだな」
ルナはにっと笑い、
「大当たり ♪ クロロ、いつもながら冴えてるね。ならば、白粉花は誰だと思う？」
白粉花？そう言われても・・・
話しの流れからすれば、団員の誰かであることに間違いはないはずだが・・・
白粉花・・・
花言葉はあなたを想う・臆病・内気だったはず。
茎はみつに枝葉に分れ、潅木状になる節が出来る。
全体的にはライムグリンの葉を付け、花は絞り模様の入る赤・白・黄色の３色からなる。
別名は夕化粧とも呼ばれ、夕方から芳香を放ち咲き始める。
翌朝には萎み始めるが、葉の陰や物陰になっている花は昼位まで咲き続けるので、遅く起きても見ることが出来る。
花が咲き終わった後は額基部を残して脱落し、種子を一つだけ持つ実を付ける。
実そのものは黒く見えるが、中身は白い粉状の胚芽であるために白粉花の名前が付いたとされている。
果たしてこんな花に例えられる奴が団員の中にいただろうか？
いくら考えても思い付く奴が頭の中に浮かばない。
「ルナ、降参だ。教えてくれ。誰が白粉花なんだ？」
俺はルナの腰に回していた腕に力を籠めて訊ねた。
すぐ目の前には嬉しそうに含み笑いをする顔。
「ふふっ・・・知りたい、クロロ？」
「あぁ、気になる。知りたいね」
ルナはもったいぶることなくその名をさらりと口にした。
「マチよ。マチ姉さん。それとも可愛いあたしのマチと言うべきかな」
予想もしなかった答えに思わず俺の腰は浮き上がり、これ以上ないほど中を突き上げてしまう。
するとルナは身体を捩りながら、甘い嬌声をあげる。
俺の首に廻されていた腕に力が籠もり、
「やっ・・・クロロ、そんなところ突かれたら、逝っちゃうよ。まだ、逝きたくないから加減して」
ソファーに腰掛け、俺の上に跨って一つになっていたルナが、舌っ足らずな口調で切なく訴えたが、
「呆れた奴だな。お前、女にも手を出したのか。見境いがないというか、なんて好き物なんだ」
俺の言葉に不満を感じたのか、逝きそうになったことに不満を感じたのか、ルナが口を尖らせる。
「・・・だって、マチが可哀想だったんだもの。誰かさんのことを好きでも誰かさんは相手にしないしね。そのためにストレス発散でマチは男を漁ってさ、可哀想だと思わない？女だって欲求不満になるんだよ。だからマチの相談相手になっていたら・・・」
なっていたらって、そんな関係になってしまったと言うのか。
あいた口が塞がらないというか、言葉を失うというか・・・
別に宣伝しているわけではないが、マチだって俺とルナの関係は知っているはず。
何しろ流星街時代からの関係で、グループは違うが同じ地区の出身だ。
歳だってほとんど変わらない。
ルナの初めての男は俺だったが、最初から互いに束縛されることなく、奔放であるがゆえに年月を経ても付き合っていける。
幻影旅団となって流星街から外の世界に飛び出した後も、時折りこうやって関係を続けていられるのは自由であるがゆえ。
他に恋人やセフレを作ろうと、二人の関係に問題が生じることはなかった。
今日だって突如として深夜にやってきた俺のことを心よく迎え、ベッドに行き着く前に居間のソファーで、服を脱ぐのもまどろっこしく性急に繋がった。
対面座位でゆっくりと揺さぶられながら、ルナはとろりとした目で話す。
大まかに話せばこんなところか・・・
マチの切ない想いとは・・・ある男への想い。
相談される中で、堰を切ったようにルナに訊いてきた。
どのように愛されているのかと、哀切このうえない表情で。
どのようにだって！？わざわざマチがそんなことを訊いてきたのか？
だからルナは言葉にするよりも、身をもって愛されたように愛しただけなのだと言う。
俺には理解しがたい世界だが、マチはルナを通し、擬似的に得る好きな男とのセックスを体験したと言うわけか。
女であるためにそれ用の道具を使い、満足させてやったのだと。
ふふっ、誰かさんとそっくりのを使ってね。
男の代わりを忠実にこなす・・・どう愛撫したのか・・・どう擦りあげたのか・・・
最中、マチは切なく男の名前を読んでいたと、ルナは笑いながら話す。
俺としては答えようのない物語に困惑してしまう。
ルナという女の性癖をまざまざと見せつけられる。
それでも俺は繋がった場所から快楽を得るために、激しく突き上げる。
ルナの目からはいつものように一筋の涙が流れ、俺のリズムに合わせて腰を振る。
マチ・・・お前もこうやって、ルナに突き上げられていたのか？
それなりにいい女が絡み合う姿は絵になるが、客を乗せぬ虚しい花電車にも似ている。
口にした花の名前は全て夜に咲く花の名前。
朝になれば萎んでしまう。
遅くとも昼前には花の命が尽きる一夜花。
そして花の名前はお前が関係を持った男達。
だから皮肉を言ってみた。
「それで、ルナはどの花が一番好きなんだ？」
がくがくと上半身を揺す振られながら息も絶え絶えに、
「私が一番好きなのは月下美人。でも月下美人は気まぐれでさ・・・」
仰け反りながら中の収縮が激しくなり、クライマックスに近いことを教えてくれる。
だからこちらもタイミングを合わせるため、腰を浮かしたままルナの泥濘を突きまくる。
ルナは呻きにも似た喘ぎ声を放った後、放心したように上半身が崩れ落ちそうになったので、俺は汗ばんだ上半身を両腕で支え、すぐに後を追う。
膜越しに弾けた快楽に顔を歪め、俺はルナを乗せたままソファーの背に二人の身体をあずけた。
月下美人の花言葉は儚い美・儚い恋・快楽・艶やかな美人・秘めた情熱、全てがあんたに当て嵌まる。
だから面と向かい、あんたの名前を出して好きだなんて言えやしない。
口にしてしまえば突き放たれるのは目に見えている。
あんたは重荷を背負うことを嫌う。
あんたが光りのあるところに出ようとして盗賊になったことは、逆に闇の世界の住人になることでもあった。
そこまで自由に拘ったあんたを、縛ることの出来る人間なんていやしない。
報われぬ恋を持続させるため、あえてあたしは奔放な女を装うことにした。
まるで夜の花の蜜を吸うスズメ蛾のように、男達の間を渡り歩く。
月見草からはなかなか会えぬ月下美人の情報を得るために肌を重ねた。
夜行花と夕萓には人生の愚痴を聞いて貰い、少しだけ優しさという温もりに喘いだ。
烏瓜は持て余した身体の火照りを生理的に鎮めて貰う。
そして白粉花からは・・・
互いに成就せぬ恋を、抱き合うことで慰め合った。
白粉花が男の名前を呼んだように、あたしも白粉花を腰に装着したディルドで攻めたてながら、月下美人になったつもりで切なく自分の名前を呼んでいた。
あたしの腹の下にいる女はあたし自身に他ならぬ。
この想いは最初から叶わぬ恋。
だからせめて身体だけは、愛情だと錯覚した快楽を貪り喰らおうとする。
遠くで咲く月下美人はより美しく見える。
放たれる芳香に吸い寄せられる蛾達。
朝になれば萎む夢に、現実をダブらせる。
ベッドに移動しても、いつものように容赦なく啼かされ続けてしまう。
クロロの底無しの体力に翻弄され、最後には喉もアソコも涸れていた。
気が付けば時計はとうに昼を廻り、隣に居るはずのクロロは居なくなっている。
毎度のことだと乱れた姿で上半身を起こし、再びいつ咲くか分からぬ月下美人を待つことにする。
白粉花の花言葉は、あなたを想うだから・・・
End
2017/02/20 改稿
2010/08/09
Back本来は地下格納庫行きの作品ですが、どうしても表に置きたかった。二度とこのような百合要素のある作品は書かないと思うので。