Syarnorke 24
警告：一部性的表現が有ります。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。



仮宿になったホテルのダイニングルームにて

　クロロと俺は遅い朝食を取っていた。
この街には仕事のためにやって来た。
昨夜遅くホテルに入り、数日をここで過ごす予定。
計画は十分に練られ、後は観光ついでに現地の下見をするだけ。
舐めてかかるわけではないが、本番はあっさりと方付くはず。
仕事が済めば、この街とはおさらばだ。
既に大半の客は食事を済ませ、ダイニングはだいぶ空いて来ている。
かって首都でもあったこの街は、今では世界有数の美しい古都として、観光客が各国から集まる。
人気の高い美術館や宗教関係の建物は、開館と同時に入らないと大行列に並ぶ破目になる。
だから観光客は出来るだけ早く朝食を済ませ、目的の場所へと急ぐ。
それ以外でゆっくりと朝食を取っている奴らは、学術会議で来ている連中か、金に物を言わせて並ぶことのない観光が出来る輩。
あとはチェックアウトぎりぎりに出立する客だ。

そしていつもの通り、唐突に話しは始まる。

「団長、『卑猥な言葉』っていいよね。」

少し声を潜めながら、バターを塗りまくったトーストをぱくつく。
ウ～ン……カロリー高いかも。
まっ、いいか！摂取したカロリーは、いつものようにエネルギーとして放出すれば。
俺は最近ナンパした女の子のことを思い出していた。
めんどくさい手順を踏まなくとも意気投合というやつで、互いの目的のために結ばれた。
俺のテクに夢中になった女の子は、おねだりの言葉を何度も口にする。
その中には、ドキリとするような卑猥な言葉が含まれていた。
そしてエクササイズ宜しく、カロリーを消費した。

知らないうちに俺の表情が緩んでいたのか、クロロが眉間に皺をよせて咳払いをする。
そして皿の上のハムエッグを切り分けるのを止め、俺を上目遣いで見た。

「それで……『卑猥な言葉』は男が言うのか？女が言うのか？」

ナイフとフォークを皿に置き、にやりと笑う。

「やだなー、クロロ！ 女の子が言うに決まっているだろ。男の俺達が言ってどうするのさ」

何を言っているのかと、前髪を下ろした好青年風クロロに少し呆れてしまう。

「そうでもないだろ。 けっこう男が言っても興奮するものだ。 女の耳元で囁いてやると、顔を赤らめ身を捩る仕種がぞくぞくして何とも言えないぞ」

中には身悶えして、言葉責めだけで逝ってしまう女もいるって！
それって、オールバックの団長モードの時にやっているんだよね？絶対にそうだ！
思うに団長モードの時のクロロは、房中でどSが入っていそうだ。
薄暗い明かりの中、上半身裸の上に逆十字のコートを羽織る団長。
妖艶に笑い、ベッドの上の女の子を言葉責めしている姿を想像してしまう。

なかなかいやらしく、そそるものが有るかも。

獲物を前にかき上げたオールバックが、はらりと乱れる。
有無を言わさぬ命令だが、それでいて官能的。
横になった女の子が身体を捩りながら、顔を真っ赤にして恥ずかしい言葉を耳にする。

鼓膜を言葉に犯され、脳を悦楽に溶かされる。

団長にとっては肉体の快楽を、より多く貪るための前戯。
言葉だけでも蜜を溢れさせると言うのに、細く長い指が更なる快楽を身体の中心へと送り込む。
蠢く指は一本から二本、二本から三本へと増やされる。
自身の出している水音に、女の子の羞恥が極限に高まる。
団長は口元を上げ、着ているものを脱ぎ捨て、しなやかに彼女の上に覆いかぶさる。



　確かに、そういう楽しみ方もあるか……
今度、俺もやってみることにしよう。
俺は言わせる方に集中するあまり、自分が言う方は考えていなかった。
クロロを前に、俺もまだまだと思う。
でもクロロだから出来ると言う利点もあるんだ。
何故ならクロロは、団長モードとクロロモードを使い分けているから。
団長モードは冷酷でサディスティックに。
クロロモードは爽やか、好青年風に。
どうせクロロモードの時は、『言って……俺の何が欲しいのか？どこに入れて欲しいの？』てな具合に優しく、だけど強く『卑猥な言葉』 を要求しているに違いない。







クロロってば……一体、何やっているのさ！？

　皿の横にナイフとフォークを置いたクロロは、ハムエッグの半熟の黄身にいきなり人差し指を突き刺し、グチュグチュと掻き回す。
どろりとした黄身を指で絡め取り、ゆっくりと口元に持っていく。
半開きになった口の奥深くに指は吸い込まれ、味わうように指を舐めたあと、ゆっくりと時間をかけて引き抜かれてゆく。
すぼめられた口から指が抜け落ちる瞬間、この上なく卑猥で、そのくせ凄まじい男の色香が漂った。
見慣れたクロロの顔が、発情したオスの顔に変わる。
目を細め、挑発する視線の先には……一人の清楚な黒髪の美女が食後の紅茶を飲んでいた。
彼女は口にしていたティーカップをテーブルに置くが、手が震えていたせいか、白いテーブルクロスに幾つもの染みを作ってしまう。
何気なく見てしまったのか、それとも意図的に色好いクロロを見ていたのか知らないが、刺激的なクロロの行為に動揺を隠せず、俯いてしまう。
跳ね上がった心音が、こちらにも伝わって来るようだ。
だがクロロの行為が不快であったというわけではなく、むしろクロロの婀娜やかな仕種に性的刺激を受けたのは明らかだった

どんな時でも誘惑というモノを忘れぬクロロ。
そのクロロの目が、感性と本能は一体だと俺に語っていた。
ご立派！これぞ、男の鏡！

朝食の後、黒髪の美女と接触を試みたクロロは、早々に彼女の部屋にしけこんでしまう。
互いの本能が一致した時、実に行動は早い。
今頃清楚に見えた彼女の本性は曝け出され、『卑猥な言葉』 が止め処も無く溢れているはずだ。
じらすクロロの意地悪な顔が脳裏を過る。
一人部屋に戻った俺は洗面所に行き、歯磨きを済ませて髪をセットする。
今夜クロロがこの部屋に戻ることはないだろう。
部屋は都合よくラグジュアリータイプで、ホテル自慢の美しい夜景の臨める部屋。
ベッドも広く、獲物を連れ込むには丁度よい。

そして俺はこの部屋で 『卑猥な言葉』 を言うべく、街に狩りに出る。
もちろん髪型はオールバックにして。








End

2016/01/13　改稿
2009/03/15　加筆・修正
2008/02/01　加筆・修正
2007/11/15　

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具体的に卑猥な言葉は何も出てこないのですが、やはり卑猥な話しには違いない……
猥褻な部分はあくまでもシャルナークの妄想（ただしクロロという人間をよく知った上での、現実的妄想）。ＵＰした数時間後に読み直して欲が出てしまい、タイトルの『卑猥な言葉』に『卑猥な仕種』を追加。

改稿にて、シャルナークの妄想を広げてみることに。