警告：一部性的表現が有ります。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。
NOVEL『ラプンツェル・ラプンツェル』→地下格納庫TOP『ラプンツェル・ラプンツェル ラプンツェル視点』→NOVEL『ラプンツェル・ラプンツェル そして、最期に見たもの』の流れですが、『ラプンツェル視点』はなくても『そして、最期にみたもの』で、流れとしては読めるかと思います。
『触るな！！』息絶えたわたしは叫んでいた。
男と泊まっていた安宿に、どかどかと踏み込んきた黒い制服姿の男達。
呆然と床に座りこんだ裸の男の手首に、冷たい手錠が嵌められ、肩には温かい毛布が掛けられる。
それに反し、ベッドの上のわたしには毛布など掛けられることなく、絶命したままの状態。
容赦なく四方八方からフラッシュを焚かれてしまう。
三十分前まで男と情交していたままの姿で放置され、首には青紫の手形を残す。
不公平といえばあまりにも不公平。
同じ裸でも、罪を犯した人間には恥ずかしくないように毛布が掛けられ、犠牲者のわたしには何の心遣いもない。
まだ体温を残し、股間には男が放った精が流れ出ているというのに。
そんな羞恥がお前にもあったのかと言われれば、それまでだけど……
そして、最期に見たもの
安宿の壁は紙のように薄く、隣の睦み合う声が筒抜けで聞こえる代わりに、こちらの嬌声と行為における音も手に取るように聞こえてしまう。
別に恥ずかしさなんかないけれど。
仮にわたし達の喘ぐ声が聞こえようと、節穴から交わる姿が見えようと、むしろ覗かれることに興奮を覚えるだけのこと。
今回はそれが仇になったのか、救いになったのか……
隣室の若いカップルは、興味津々で聞き耳を立てていたのだ。
卑猥な言葉が飛び交い、遠慮なく啼き声をあげる。
さぞかし面白いライブだっただろう。
隣室のカップルに、金をよこせと言ってやりたかった。
クライマックスは飛び交う罵声に、断末魔……世間一般に言う痴情の縺れ。
驚いた隣室のカップルは、すぐさま警察に通報。
白衣を着た男がわたしの脈をとり、左右に首を振る。
職務に反し、男達の興味本位な視線がわたしの身体に突き刺さる。
見たければ見ればいい。
仰向けで膝を立て、白い精の垂れる穴の奥の奥までも。
この身体にどれだけの男が悦楽の声をあげ、快楽を貪ったのか。
わたしは身体一つであのゴミ溜めを這い上がり、今日まで生き抜いてきたのだ。
でもこれからは、いい思いが出来るのではないかと予感めいたものがあったのに。
羽振りのよさそうなクロロと十年ぶりの再会……きっと恵まれないわたしを神が哀れんだのだ。
それなのに……
くだらぬミュージシャン気取りの男に終止符を打たれるとは。
触るな！息耐えたわたしは叫んでいた。
開ききってしまった瞳孔に映る部屋。
床に置かれたわたしの全財産が詰め込まれたちゃちなスーツケースに、白い手袋が触れる。
むりやり荷物を押し込んでいたケースは、開かれたと同時に荷物が溢れ出てしまう。
ごそごそと、わたしの大切な服や生活用品がかき回され、一番下にあった古いスケッチブックが引っ張り出された。
それに触るな！
流星街時代から、唯一持ち続けている黄ばんだスケッチブック。
ゴミ山で偶然見付けた未使用のスケッチブックは宝物。
小屋の下敷きになった仲間を見殺しにしても、探し出した大切な宝物。
汚れたわたしの神聖な品。
そこには大好きな初恋の人が、下手な絵でたくさん描かれている。
お願いだから開けないで……わたしの大切な想い！
小屋を飛び出した身勝手なわたしを、何度も受け入れてくれた。
黒一色で描かれた彼。
触らないで、わたしに……
触れて欲しかった彼の手……
乾いていく目に、白い手袋が瞼を閉じていく……
さようなら……くだらない、最後までクソのようなわたしの人生。
ベッドに金色の髪が波打つように広がる
わたしの名前はラプンツェル
童話の中の、塔に閉じ込めれた可哀想な女の子
地下格納庫を見付けて下さった方の専用短編に、ラプンツェル視点が続きます。
（近日中にUPされる予定ですが、NEW には記されません）
2011/04/25 地下格納庫TOPにUP済み
2017/08/05 改稿
ラプンツェル・ラプンツェル 関連作品
ラプンツェル・ラプンツェル End
2017/09/04 改稿
2011/04/22
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