Syarnorke 71
警告：一部性的表現が有ります。苦手もしくは不快を感じられる方はお避け下さい。
エンリケ＝ベラスコの葬式も無事に済んで二ヶ月。
案の定、若き未亡人となったアナへの世間の関心は高かった。
何しろ若き未亡人と言っても、十九歳の若すぎる未亡人。
そのうえ美人で大学生。
更に億万長者ときているのだから、話題にこと欠かない。
お腹はまだ目だっておらず、愛する夫の喪に一年間服するという名目で、大学は休学することにした。
そしてその間に子供を産もうという計画。
しばらく俺は影の存在で、アナの生活が静かに送れるよう、道筋をつけるために働くことにした。
いかんせ、アナにエンリケ＝ベラスコの作った会社の経営を引き継ぐなんて無理な話しで、むしろ会社を安くても売ってしまった方が賢明であり、気苦労もなくなってくれる。
そのことにはアナも大賛成で、その準備のために俺は奔走していたが、それ以外にも仕事は多い……
美しく若い未亡人に群がってくる、色と欲だらけの害虫共を駆除するのも大切な仕事。
俺の立場はアナの私的秘書という形をとり、クロロの仕事をする時以外は邸に出来る限り顔を見せるようにしていた。
何も不安がないように、ともかく大過なく平穏に出産して貰うために。
そのためにも早くエンリケ＝ベラスコの財産を清算し、新たな生活拠点を作ってやりたかった。
もちろん財産の中には、俺の探していたアレキサンドライトキャッアイも含まれている。
（それからどうなった）
幸いにして、アナの悪阻は軽い。
それでも安定期に入るまでは、出来る限り邸で大人しく生活をしていた。
だから四ヶ月を過ぎて安定期に入ったころ……
「……へぇ～。体位を工夫すれば、かなり色々なセックスが出来るんだな……」
俺は隠れ家で、パソコンのディスプレイに食い入っていた。
クロロの急ぎ仕事が入り（わがまま俺様男め！）、後ろ髪を引かれる思いでアナを残し、数日間隠れ家に戻っていた。
連日のハードな調べ物に疲れ、気分転換を兼ねてプライベートな調べ物に集中。
この数ヶ月間の禁欲生活にそろそろ限界を感じ、早くアナの中へ入りたくてしょうがなかった。
もちろん浮気なんかしていないし、考えたこともない。
そのための調べ物。
大切な母体……妊娠初期は流産の危険が高いため、セックスを控えていた。
禁欲生活と言ってもアナの中に入らなかっただけで、互いの身体には触れていたんだけど。
おかげで随分とアナのテクニックが向上した♪
にや付きながら、俺の股間で上下に動くアナの頭を思い起してしまう。
……猛る俺のモノを咥えたまま、上目遣いで見上げてくる艶かしい表情。
ちろちろと動く舌先……上下運動に加えられるローリング。
たまに軽く歯をたててくれるのも好きだ。
知らず知らず俺の腰がいやでもリズミカルに動いてしまう。
男としてはこのうえない快楽の時間……それが大好きなアナにして貰えるのだから極楽だ。
最後には女の子のような喘ぎ声を漏らし……
思い出すだけで張り詰め、痛くなってくる股間をジーンズの上から宥め、空いた手はマウスを握り、読みかけの画面をスクロールバーで下へとドラッグする。
■ 妊娠中のセックスライフについて
お腹には負担をかけない体位で。
正常位はお腹を圧迫しやすいので、加減を要します。
女性が苦しくない範囲であれば、ペニスの挿入深さに制限はありません。
フムフム……
横向きに、後方から挿入するのもお勧めです。
騎乗位も上になる女性がみずから調整でき、お腹に負担の少ない体位です。
妊娠後期は後背位がよいでしょうが、挿入の深さには注意が必要です。
なるほど……
感染症を防ぐため、妊娠中でもコンドームを装着しましょう。
これらの注意事項を頭に叩き込み、アナの身体には負担を軽く、快感はより大きく、愛あるセックスに励むのだ。
きっと第三者が俺の顔を見ていたら、さぞかし緩んだものだったに違いない。
「おい、シャル」
「！！おい！！シャル！！」
「「うわッ！！！」」
予期せぬ呼びかけに、突拍子もない叫び声をあげていた。
しかも腰掛けていたハイバックチェアーがら、半分腰がずり落ちてしまう。
「何やってんだ、シャル！？」
声の主であるクロロが、落ちかけた身体をアームレストで支えていた俺の顔を覗き込んでくる。
手には近所のプリン専門店の可愛らしい箱を携えている。
何やってんだって、こっちが訊きたいくらいだ。
いつもいつも、勝手に人の隠れ家に入ってくるなよ！！
気配はすれど、何度もドアホンを鳴らしても出てこないから、勝手に入らせて貰ったって！？
そうだった……ドアホンが壊れているのを忘れていた。
どうせ訪ねてくる奴もいないからと思い、そのまま放置していたんだ。
慌てて身体を元の位置に戻し、横に立つクロロを睨みつけた。
「仕事ならきちんとやっているよ。今日の夜にはお宝の隠し場所と、侵入経路は確定させるからさ」
「仕事って……お前、今妊婦とでも付き合っているのか？」
クロロは机の上のパソコンを見つめ、怪訝な顔をした。
妊婦って！？
慌てて視線をクロロからディスプレイに移す。
『つっ！！！』
❤❤❤ 初めてパパになる人のための、
妊娠中の素敵なセックスライフ ❤❤❤
二段抜きでど～んと書かれたタイトルに、顔が青ざめる。
もちろん自分で検索したサイトなんだけど。
自分でも怖いくらい冷めた声をしていた……心臓はばくばく。
「仕事の息抜きにエロサイトをサーフしていたら、『体位』でここに辿りついちゃってさ。俺も経験したことのない世界だから、思わず真剣に読んじゃったよ」
嘘は吐いていない……まだ経験のしたことのない世界だ。
その前の話しは嘘ですが、さもありんとクロロが軽く頷いた。
「そうだな。可能性がないわけじゃないが、俺達には限りなくゼロに等しい話しだな。特にお前は用心深い奴だから」
用心深い奴……
日頃からクロロとの会話で、女の子の『今日は大丈夫だから……』は、安請け合いはしないと言っていた。
遊びで子供を作る気はないし、女の子の中には好きな男を縛るため、中出しをさせる奴もいる。
ピルを飲んでいるからと言われても、どうやってそれを確認するというのだ。
だから避妊具を財布やポケットに忍ばせて置くのは当然のこと。
女の子が持っている避妊具は、針で穴を開けているかもしれないから絶対に使わない。
だけどアナとは……いや、アナだったからこそ、全身全霊で愛したんだ。
だから俺は、アナの中で逝くことを躊躇わなかった。
でも今は、この状況をクロロに伝える時期じゃない。
子供が生まれたら……少し大きくなってから……それとも成人してから……
結局は一生、子供がいることは話さないのかもしれない。
平和に、俺達は家族三人で生活をするんだ。
たぶん家族は順調に増えていく……俺が密やかに、もっとも欲していたもの。
「それで、何か用事があったんでしょ？」
クロロが突然現れる時は、経験的に碌な話しではない……
「あー、この次の仕事の話しだが……」
やっぱり！
今の仕事も準備段階で調べている最中だというのに、もうその次の仕事の話しですか。
クロロらしくって、怒る気にもなれない。
泣く子と地頭には勝てずで、クロロには子供のころからイエスマンだ。
だけど俺は幻影旅団であることも、クロロのことも大好きで、これからも蜘蛛の手足であることに変わりはない。
変わることは、俺に護るべき者が増えたということ。
まだ生まれてはいないけれど、小さな命に有難うと心の中で言っていた。
濡れた黒衣の下にあるものは・・・ （それからどうなった？） 関連作品
日常の情景9 喪服の女
濡れた黒衣の下にあるものは・・・
END
2017/09/19 改稿
2010/04/08
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